実際のコンピューターネットワークでは,絶え間なく送られてくるデータ(パケット)の行き先を「経路表(ルーティングテーブル)」を用いて振り分けている.パケットが自分の端末に届いたとき,それが自分宛なら受け取るが,そうでなければ経路表を見て,宛先に適した端末へ転送していく.これをルーティングと呼ぶ.
端末が絶えず移動する環境下では,端末の移動に伴うリンクの接続,切断情報を定期的に経路表に反映させる仕組みが必要となる.この仕組みを「ルーティングプロトコル」と呼ぶ.
アドホックネットワークでは,端末の移動特性,端末の密集の度合いなど,さまざまな環境の違いによって,最適のルーティングプロトコルは異なってくる. IETFのMANET WGでも,さまざまなルーティングプロトコルが考えられており,それぞれに長所短所がある,ほとんどは「Reactive型」か「Proactive型」のどちらかである。それらのの特徴は以下である.
「Reactive型」
Reactive型プロトコルは,実際にデータを送信する際に初めて起動する.起動したルーティングプロトコルは,周りにある通信可能な端末の電波を送受信して確かめ,ルート構築を行う.ルート構築に多少の時間がかかるため,通信が開始されるまで待ち時間があるが,ネットワークへの負荷,電池効率の面を考慮すると有利である.さらに,必要時にのみルート構築を行うため端末への負荷が少ない.
「Proactive型」
Proactive型プロトコルは,任意の時間間隔ごとにルーティング可能な端末を確かめており,常にルートが構築され通信可能状態となっている.電波発信を頻繁に行うためネットワークへの負荷,電池効率の面を考慮すると不利であるが,即座に通信を開始でき,常時ルート確保により通信タイムアウトや送信データのロスが少ないという利点がある.
現在、さまざまなルーティングプロトコルが考案されているが,どれも固有の問題を内在し、オールマイティなプロトコルはない.ルーティング班では、固有の問題を明確にし、できるだけこの欠点を補完する状況アダプティヴなルーティングプロトコルの開発に挑戦している.