山村研究室 研究テーマ例

  本研究室では、大規模集積回路をはじめとする非線形システムの設計・解析手法に関する研究に取り組んでいます。本研究の特徴は「理工学上の様々な未解決問題を解決する新しいアルゴリズムの開発」にあります。それによりLSI設計期間の短縮や民生機器の高度化・低価格化、更にはそれに関連する情報産業の発展に貢献しています。
  以下、これまでの代表的な研究テーマ例とその成果例を紹介します。

1) 大規模集積回路の新しい設計・解析手法の開発

  LSI設計における大きなボトルネックとして世界中の設計者を悩ませていた「非収束問題」を解決するアルゴリズムを開発し、企業との共同研究により、最も解析が困難とされるバイポーラアナログ回路に対して、その最大級である1万素子クラスのアナログLSIを世界で初めて収束の保証付きで解くことに成功しました。また、このクラスのLSIを業界に先駆けて製品化し、民生機器の高度化・低価格化に貢献しました。本技術を用いて設計・開発されたバイポーラアナログLSIの生産金額は年間約800億円、生産数量は年間10億個以上に達し、パソコン、家電、映像機器、スマートフォン等に広く使用されています。またこのアルゴリズムはIEEE(米国電気電子学会)の次世代SPICEプロジェクトで採用され、回路シミュレータSPICEに組み込まれています。それにより長い間多くの設計者を悩ませた「非収束問題」は国内外で完全に解決されています。
  最近の研究では、上記アルゴリズムを「計算効率の改善」「インプリメンテーションの容易化」などの観点から飛躍的に発展させる研究が進められています。その他、LSI設計における重要な未解決問題である全解探索法の開発など、より高機能なLSIの開発を可能にする研究を行なっています。
 (速報)このテーマの論文で、山村研M1が昨年10月27日に国際的な賞を受賞しました!!

2) 線形計画法を用いた非線形システムの新しい解析法に関する研究

  非線形システムという曲がりくねった世界の問題を線形計画という平坦な世界に引きずり込んで料理しようという研究で、様々な未解決問題の解決に成功している、非常に有効性の高い方法です。10年前に本研究室で開発され、以来世界中で使われている方法です。本研究室では主としてLSI設計に応用していますが、海外では遺伝子工学、ケミカルバイオロジー、コンピュータグラフィックス、システムの信頼性向上、精度保証、電磁波の散乱問題、ファジィ最適化、パターン認識、指紋認証、高分子化学、数理経済学など幅広い分野で応用されています。Microsoft Excelにも搭載されている方法で、医療機器など高い信頼性を要する分野で重宝されています。 

3) SPICE指向型解析法に関する研究

  「式を回路で記述する」という逆転的発想に基づく方法論に関する研究です。これも数年前に本研究室で生まれたオリジナルのアイデアですが、既に国内外の大学・企業で採用されている、大変注目されている研究です。本来回路を解くためのソフトウェアであるSPICEを用いて、「理工学上の様々な問題を」「専門的知識があまりなくても」「複雑なプログラミングを行うことなく」「手軽に」「無料で」「簡単に」解くことができます。1)の研究とも深く関連する研究で、例えば本研究により1)で述べた「生産金額年間800億円の技術」の最新版を誰でも簡単に利用することが可能になります。

4) 数理計画ソルバーを用いた非線形システムの新しい解析法に関する研究

  2012年に山村研究室が提案した、まったく新しい発想に基づく研究です。近年驚異的な発展を遂げ社会を大きく変えている整数計画法に着目し、整数計画法のソフトウェア(ソルバー)を用いて、様々な連続系の難問を“複雑な理論やプログラミングなしに”簡単に解く方法の研究です。整数計画ソルバーとしてはCPLEX、Excelなどを使います。「連続」と「離散」を統一的な枠組みで解釈する大胆な発想の研究で、これまでの技術ではできなかった高度な特性解析、変動解析、完全解析などを可能にしています。先月イタリアで開催されたIEEE国際会議でも、山村研大学院生2名の発表は非常に高い評価を受け、今後新しい半導体素子が発見されたときにこのようなアルゴリズムが重要になることが指摘されています。また整数計画法自体が、修得しておくと社会に出てから非常に役に立つ魅力的な方法です。

5) 多変数関数を一変数関数の和で表現するアルゴリズムに関する研究

  1900年のパリの国際数学者会議で提唱された有名なヒルベルトの第13問題「多変数関数を一変数関数の和で表現できるか」に対し、コルモゴロフが与えた存在証明に実用的なコンピュータアルゴリズムを与える研究で、現在様々な分野でその応用と実用化が進められています。またその成果は雑誌「数学セミナー」などでも紹介されています。

6) その他の研究例

  外部機関からの依頼により行う研究もあります。高分子溶液の多層平衡(高分子学会からの依頼)、クラスタリングによる航空写真の画像理解(宇宙開発事業団からの依頼)、経済予測モデル(富士総合研究所からの依頼)、水に溶けない薬の開発など、その研究分野は多岐にわたります。特に高分子溶液の多層平衡に関しては世界で初めて4相平衡溶液の開発に成功し、高分子化学の分野に大きなインパクトと波及効果を与えた実績があります。

7) 山村研究室の学生の活躍

  山村研究室の歴代の学生やOBは在学中の研究により科学技術庁長官賞、電子情報通信学会論文賞、情報処理学会業績賞、船井情報科学振興賞、電気通信普及財団賞(3名)、電子情報通信学回路とシステムワークショップ奨励賞(5名)、IEEE ICCCAS Best Paper Award(2名)、IEEE APCCAS Best Paper Award、渋谷健一奨励賞(2名)、中央大学学員会会長賞(3名)、船木勝馬学術奨励賞、中大電気同窓会賞(10名)など、様々な賞を受賞しています。

(文責:山村研M2 渡辺 涼太)

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