新技術開発財団

市村学術賞 功績賞

研究業績 大規模集積回路の大域的求解法の開発とその実用化に関する研究
技術研究者
中央大学 理工学部
教授 山村 清隆
中央大学 推薦

研究実績
アルゴリズムの概要   大規模集積回路(LSI)の設計では、回路を記述する非線形方程式をコンピュータで解くことが中心的な作業の一つとなる。このときの非線形方程式の数値 解法としてはニュートン法が多用されるが、ニュートン法は初期値を解の近傍にとらないと収束しない(大域的収束性がない)という欠点があり、LSI設計に おける大きなボトルネックとして世界中の設計者を悩ませていた。
 本研究では、「非収束問題」を理論面・実用面の両方から解決する効率的なアルゴリズムを開発し、その大域的収束性を証明した。更に企業との共同研究によ り、最も解析が困難とされるバイポーラアナログ回路に対して、その最大級である一万素子クラスのアナログLSIを世界で初めて収束の保証付きで解くことに 成功した。それによりLSI設計期間の短縮や、このクラスのLSIの業界に先駆けた製品化、更には民生機器の高度化・低価格化に貢献した。
 本技術を適用して設計・開発・製造されたバイポーラアナログLSIの実績は次の通りである(以下、1999年に科学技術庁に提出された正式文書より抜 粋)。【生産金額】年間約800億円、【生産数量】年間10〜12億個、【開発技術】例えば音響・映像機器向けの各種高性能・高機能1チップLSIの開発 に成功(世界市場占有率は50%以上)、【主な使用先】家庭用電気製品、マルチメディア製品、パソコン、携帯電話等に使用されている。
世界最大級のバイポーラアナログLSIのレイアウト図  また、本研究では欧米で使われている回路シミュレータのプログラムに簡単な修正を施すことにより大域的収束性が保証されることを証明した論文を発表し、国 際的な評価を受けた。このアルゴリズムはその後IEEE(米国電気電子学会)の次世代SPICE プロジェクトで採用され、全世界に公開されている。
 それにより世界中の設計者が収束率100%の回路シミュレータを利用できるようになり、長い間多くの設計者を悩ませた「非収束問題」は国内外で完全に解決されることになった。
 このように本研究は理論的完成度と実用性が高く、学術分野の発展だけでなく、LSI設計技術やそれに関連する情報産業の発展に大きく貢献している。
 




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