2016年度学科卒業式挨拶

中央大学理工学部電気電子情報通信工学科卒業生並びに中央大学理工学研究科電気電子情報通信工学専攻修了生の皆さんご卒業おめでとうございます。そして卒業生、修了生のご家族の皆様まことにおめでとうございます。この晴れの日に、学科を代表してひとことご挨拶申し上げます。

私はそんなに野球は詳しくないのですが、プロ野球を見ているときに解説者がピッチャーが投げる球を「ボールを置きにいく」という表現を用いることがあります。全力でボールを投げるのではなく、コントロールを重視して、そこそこの力で投げることを意味します。転じて、一般社会でも、全力で物事に取り組まないで、「この程度でよいだろう」という仕事をしたときに、(ボールを)置きに行ったな、と否定的な意味で使われたりします。
 さて、大学の先生は、総じてボールを置きに行く態度が嫌いです。たとえば、卒業研究や修士論文作成で指導教授に成果の報告に行った時を想像してください。自分がまあ、この程度やれば卒研では十分であろう、といような成果を持っていったところ、こっぴどく指導教授にやり込められた人もいるかと思います。そこそこ自分はやっているのに、ぜんぜん進んでいないあいつよりなんで怒られなければならないのだ、と憤りを覚えたかもしれません。これは、この学生はもっとやればできるのに何でこの程度で満足しているのだ、という教育者、研究者としての意思表明なのです。君はもっとできるはずだとのメッセージなのです。
 この考えを具体的に取り入れた企業もあります。ユニバーサルスタジオジャパン、いわゆるUSJには、失敗を恐れずに挑戦した社員を表彰する「スイング・ザ・バット賞」という制度があるそうです。USJはいろいろな新しい企画を立ち上げる必要があります。その企画の中で、成功するしないは別として、振り切った企画に賞を与えるものです。ボールを置きに行くのではなく、豪快な空振りに賞を与えるのです。皆さんは、総じて若いわけで、フルスイングして失敗することが許されるのです。私たちはこれからの皆さんのフルスイングに期待しています。
 ただ、老婆心ながら一言付け加えさせてください。このようなフルスイングに賛成する大人は、フルスイングすることで自分や組織によい影響がある、もしくは無関係であることが大半です。明らかな悪影響が見えている場合、反対まではしないかもしれないけれど、忠告やらアドバイスはするかもしれません。フルスイングしようとする皆さんは、そのことで頭がいっぱいで周りが見えなくなっているかもしれません。ひとの忠告は素直に聞きましょう、というのが卒業していく皆さんへのもうひとつのメッセージです。