平成4年度に中央大学理工学部電気・電子工学科へ設置された計測システムは大きく分けて
計測装置と解析装置に分かれる.
計測装置は幅5.4[m],奥行き5.7[m],高さ3.6[m]のシールドルームに電波吸収材料を装着した電波暗室と,
ヒューレット・パッカード社のアンテナ測定システム(HP85301C)を中心とした計測器類及び
それらを制御する計測制御装置(HP9000/382)より構成されている.
一方解析装置(HP9000/730)は,測定データの集約,結果の表示及ぴ理論解析等に用いられる.
電波暗室に使用されている電波吸収体は,発泡ポリエチレンを基材としてカーボン
の抵抗損失により 電波を吸収する.
また垂直入射時の吸収効率を上げるため,吸収体はピラミダル形状となっている.
電波暗室内に引き込まれるAC100Vの交流電源には,電波暗室外からの外来雑音を取り除くために
電源フィルターが挿入されている.
図1に本計測システムをRCS測定のために利用した場合の構成例を示す.
本例は準モノスタティックの測定例である.
信号源から出力された信号はパワーアンプで増幅され,
送信用のアンテナから放射される.
この途中で方向性結合器によりフェイズロックをかけるための基準信号が分離され,
30dBの減衰器を通してa1ポートに送られる.
また散乱標的において反射,散乱して戻って来る信号は受信用のアンテナで受けられ,
テスト信号としてb2ポートに送られる.
本計測システムはRCS測定の他にアンテナ特性の測定やベクトルネットワークアナライザー
としても使用できるようになっている.
その上,取り扱う電波の周波数が10GHzとかなり高く,伝送系の減衰が大きくなるため,
アンテナから信号源及び周波数変換器をあまり離すことができない.
したがって信号源と周波数変換器は電波暗室内に設置されるため,
電波吸収体で包囲するなどしてこれらの機器の影響を最小限に押さえる必要がある.