2次非線形光学定数の精密測定

研究者:数面 雅博, 林 雄大, 宮川 祐 (2005年度)

研究者:数面 雅博, 森藤 慶之 (2006年度)

研究者:数面 雅博, 明星 敏之 (2007年度)

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高効率の半導体レーザを作るには,「波長変換」が必要です.これについての研究は大きく分けて次の2つが挙げられます.

・光第2高調波発生により,光源の半波長のコヒーレント光を得る→高密度化

・パラメトリック蛍光,差周波発生によるコヒーレント光の長波長→光通信分野での応用

これらの波長変換の効率を決める重要な物理量が「2次非線形光学定数:d」と呼ばれるものです.この測定にあたり,まず我々がやるべきことは,使用レーザの特性を把握することである.まず実際の測定系を組む前に,レーザの時間変化特性を測った.レーザは安定するまでに時間がかかる上,温度に依存する.そのため,ディテクタを外界の温度にさらさないために箱で覆い,安定するまでの時間を60分間測ってみました.このレーザの場合,30分で安定すると判断しました(図1).設定波長との誤差を解析するために,研究設備でも紹介した「FT-IR」を使いました.図2は2000.00nmに設定したときのレーザのスペクトルです.

図1:設定出力0.8mW, 設定波長2000.00nm

図2:CWレーザのスペクトル

次に,レーザのビーム径をナイフエッジ法により調べます(図3).ここでナイフを数umずつずらすことにより光を遮り,そのときのパワーを測り解析します.使用レーザが赤外光だったので,実に根気のいる作業となりました.

図3:右写真の左からレーザ,ナイフ,ディテクタ

測定系を組むにあたって,ビーム径を20umに整形し直す必要があります.複数のレンズを組み合わせ整形するわけですが,以前にも述べたように赤外光なので,可視光に比べ作業が難しくなります.肉眼では見えないので特殊なカメラ(研究設備参照)を介して見ています.このレーザ光源を設置している台にも問題があったため,気付くまでは八方塞がりといった感じでした.図4はIGORによりフィッティングした測定例です.ビーム半径を,およそ1500umに整形しました.

図4:ナイフエッジ法によるビーム径測定例

ビーム半径が小さなものになると,小さなビーム径を測るのに適したピンホールを使った方法を用います.使用ピンホールは1umや500umなど様々ですが,我々は1umを用いました.図5に測定風景を,図6に測定例を同様に載せます.

図5:右写真の右がディテクタ

写真からは分かりにくいですが,左写真の奥が光源で手前がディテクタです.右写真はディテクタ付近の拡大で,左の焦点距離48mmのフォーカシングレンズを通って,右のディテクタに入っています.このディテクタ面に1umのピンホールを着け,黒い布で覆っています.これはピンホールのエッジ部分から光が漏れ入ってしまうことを防ぐためのものです.本当に僅かしか反応しないので,探すのに苦労しました.図6のビーム径は,およそ20umです.

図6:ピンホールによるビーム径測定例

この他にも、ディテクタで検知するための増幅度を変えたときのV-I特性など,多くの準備測定を経て図7,図8の測定系(2005年度版:Lock-in検出)を作りました.Lock-in検出器に高調波成分のみが検出されるように微調整を繰り返し,試料(GaAs, CdTe)を入れて測定します.系までに約3ヶ月を要しましたが,これは手順に問題があった為であり,もっと効率良く進めればここまで時間はかからないでしょう.

図7:2005年度版測定系の写真(Lock-in検出器やPhoton Counter等は棚)

 

図8:2005年度版測定系

 

翌年度この測定法をシュミレーションした結果,高調波出力が小さ過ぎるため,検出不可能と判断しました.そのため,微弱光の測定に便利なフォトンカウンティングを用いることにしました.こちらの都合で,試料を用いた測定は後回しにして,まず感度校正から行いました.これは『どれだけのパワーをフォトマルに入れたら,どれだけのフォトンが検出されるか』を調べることで,何Wの高調波が検出されているかを知るには欠かせません.1umピッタリのレーザが無いため,VCSEL-980(図9)と1064nmNd:YAGレーザ(図10)の2パターンで感度校正を行い,1umでの量子効率を補正することにしました.VCSEL-980については,左下がペルチェ素子を制御するものでLDを25℃に保ち,左上がLD駆動電流の制御,右のステージでLDを固定しています.まずはそれぞれの波長をスペクトルアナライザで解析したものを,図11と図12に載せます.

図9:VCSEL-980駆動装置

 

図10:Nd:YAGレーザ

 

図11:Nd:YAGレーザのスペクトル

図12:VCSEL-980のスペクトル

 

そしてフォトマルの特性調査として,プラトー特性(図13)や暗電流の時間変化(図14)やフォトマルの位置依存など色々と調べました.プラトー特性は,測定の最適電圧を探すもので,シグナルが安定していてS/N比が高いところを探します.図13より,1520Vを印加電圧と決めました.1400V以下のシグナルはほとんど分からない上,変動を見ると正確な値を示しているとは言い難いので,S/N比もあてになりません.ここでは無視しています.また,フォトマルは暗電流ノイズを減らすために,液体窒素で-80℃に冷やして使います.暗電流ノイズがどれくらいで安定するかを調べたものが図14で,結論として約2時間の冷却時間が必要ということが分かりました.

図13:プラトー特性

 

図14:暗電流ノイズの時間変化

 

感度校正においては,数々の失敗やフォトマルの偏光方向依存性調査に悩まされ膨大な時間を失いました.図15の左は系の外観ですが,フィルタやレンズを多数使ったため,収まりきりませんでした.測定時には図15の右のようにダンボールで覆い,散乱光などのノイズを極力カットしています.何十回測定したか分かりませんが,Nd:YAGレーザにおける感度校正結果を図16に載せます.ちなみに,偏光方向依存性はありませんでした.

図15:感度校正の系の外観

 

図16:Nd:YAGレーザによる感度校正

 

VCSEL-980でも同様な感度校正を行い,波長1um(第2高調波)での量子効率を求めます.そして次に,試料のウェッジ角の見積もりを行いました.試料を光路に対して垂直にスライドさせることにより,試料内での多重反射による干渉が変化し,干渉の周期からウェッジ角を導出します.これについてもNd:YAGレーザとVCSEL-980で,GaAs, GaP, CdTeについて行いました.Nd:YAGレーザによる測定系を図17に,Nd:YAGレーザによるGaAsの多重反射測定結果を図18に載せます.ウェッジ角は仕様書の0.149°と一致しました.

図17:Nd:YAGレーザ多重反射測定系

 

図18:Nd:YAGレーザによるGaAsの多重反射測定

 

準備に手間取りましたが,ようやくレーザが修理から帰還!まずは比較的高調波が大きめのGaAsから測定を試みます.しかし・・・基本波パワーが小さいため検出が出来ず,急遽LiNbO3に変更.d33がなんとか検出出来ました.測定は絶対測定なので1日がかりと大変な作業でした.測定結果のメーカーフリンジは図19です.基本波波長2umにおけるd33は11.0pm/Vとなりました.

図19:CLNのd33に対するMakerフリンジ

 

 

 

written by Masahiro Suumen

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