パルスレーザによる

三次元形状計測システムの開発

 

研究者:相場明穂 (2007年度)

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背景・目的

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kikyuu.jpg (19175 バイト)現在、宇宙航空研究開発機構(JAXA)では宇宙観測用気球を開発しています。気球の高度をより高精度に制御するためには、飛翔時の形状を確認する必要がありますが、飛翔時の気球を横から観察することは困難と考えられます。従って気球内部から形状をリアルタイムで測定可能なシステムを開発する必要があります。

本研究ではレーザ走査を行いつつ、光パルス伝播時間測定法を用いて気球の形状計測が可能なシステムを開発することを目的とします。光パルス伝播時間測定法とはレーザをパルス動作させ、対象物までの反射時間により距離を求める方法です(原理参照)。今回、出力120mWの高出力半導体レーザ(波長784nm)を用い、繰り返し周期1MHzで、パルス動作するための微分回路を製作することで長距離計測を実現させます。また、レーザ走査用にアンプ、モータ、コントローラ部をそれぞれ製作し、レーザ光を2次元走査できるガルバノスキャナシステムを作り上げます。

このシステムは60Hz以上の高速動作させることでスクリーン上にレーザ光の残像が残すことができます(人間の目は60Hz以上は残像としてみえるといわれています)。従ってレーザプロジェクタとしての機能検証も行います。

 

原理(距離計測法)

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sokuteikei.jpg (19052 バイト)距離計測方法には光パルス伝播法を使用しました。この方法はマイケルソン干渉計を応用したものにレーザ光をパルス状にし、入射することでパルスの時間差で距離を測るというものです。

ちなみにマイケルソン干渉計の原理は光源から出た光がコリメーターレンズにより平行光となり、ハーフミラーにより2つの光路に分割(振幅分割)されます。2つに分かれた光束はそれぞれミラー1、ミラー2で反射し、元の光路を逆戻りしてハーフミラーにより重ね合わせられ、ディテクタで検出されます。特徴としては非常に広い応用性があり、微小測長、光波長及び波長比の測定、屈折率、分散率の測定、表面粗さ、薄膜の測定等、幅広く用いられています。ハーフミラーにより2光に分離された一方の光の長さの計測に使用し、一方の光を固定標準長に用いる場合は以下の2点に留意することが必要です。その1つは、2光が分離されている間の走行時間差、すなわち走行距離差が使用したレーザ光の可干渉距離以内にあること(等距離に近いほど望ましい)、もう1つは再びハーフミラーで1本のビーム光とて干渉させる場合に2光の光強度を等しくすることの2点に留意することです。2光の強度をそろえるには、強い方の光に減光フィルタを用いて減光させます。しかし、今回は干渉自体は測定に影響しないので強度を揃える必要はありません。

測定系に関しては図を参照して下さい。今回は小型化を徹底するためキューブビームスプリッタを使用することで側面にミラーが装着可能です。これは測定系を組み立てやすくもなります。  

 

原理(2次元走査法)

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galvo.jpg (15381 バイト)形状計測するためにはレーザ光を走査(様々な場所にあてる)必要があります。今回はポリゴンミラーを用いたりロボットモータを用いたりと様々な方法を試みましたが、その中でも最も使いやすいと感じたガルバノスキャン法により2次元走査を実現させました。

ガルバノスキャン法の構造は右図のようになっています。モータを振動(正転逆転の繰り返し)することでレーザ光を様々な場所にあてます。今回使用したモータはマブチモータ(RS-380PH)です。このモータは回転数、トルク共にすぐれているため、加速力と速さが必要な場合に大いに活躍できるモータであると思います。また、モータとミラーの接続方法はミニ四駆などについているギアを削り、ミラーを接着剤で固定しました。

モータを自作することにも挑戦しましたが、手作りで制度を出すのには相当な努力が必要だと感じました。とくに磁石を磨く作業には困難を極めます。また、自作なので無駄も多くなり、結果として安価な既製品を使用することが一番であると感じました。

 

システムの構成

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sisutemu.jpg (17517 バイト)全体のシステム構成は右図のようになっています。以前は自作アンプを使用していたためコントローラ部分でマイコンからの信号を変換していましたが現在はレーザ部のための電源を供給するために使用しています。また、モータドライバはマブチモータ(RS-380PH)の最大電流値の2.9Aに対応可能なTA7267BPを使用する予定でありました。このモータドライバは正転、逆転、ストップ、ブレーキの4モードがコントロールできます。しかし、電圧値を変化する事が難しいため、同じ機能に加え電圧値をマイコンで変化させる事が可能な1A用のTA7291Pを使用しています。ロジック電源はマイコン電源の6Vから供給し、制御電源はマイコンに直接接続しています。また、長時間使用するとモータドライバが発熱するため、放熱フィンを取り付けました。

フィードバックがかからないため単純な回路となりました(回路製作参照)。今後は未完成部分である信号処理回路とディテクタ部を製作したいと考えています。製作予定している回路はフォトディテクタを使用してパルスを受信します。その信号を増幅しマイコンに入力し、マイコン部に設置してある水晶でカウントととり、信号の時間差を計算します。そこから距離を計算し、マイコン部にLCDを取り付け、そこに表示させるもしくはPCに表示させます。

 

回路製作

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kairozu1.jpg (13347 バイト)まず短パルス発生回路を説明します。水晶発振器からパルス波を入力し、インバータでバッファ(電子回路において駆動能力が不足する時に使用される、駆動能力を増強する機能を持つ構成回路)します。コンデンサと抵抗により微分し(微分回路)、さらに抵抗を用いてバイアスし、ダイオードで5V以上をカットします。また安定化を図るためバイパスコンデンサも使用しています。またLD(シャープ,GHO781JA2C)に電流が流れすぎないように抵抗で調整します。ICは電流値、速度の点より74F04を使用しました。

以前は安定化電源とファンクションジェネレータを使用していたため、持ち運びはできませんでしたが、今回気球にのせるということなので電池と水晶発振器を使用し、手のひらサイズに小型化しました。

実際に製作した回路の写真を載せておきます。

kairozu.jpg (16800 バイト)次にそれ以外の回路を説明します。回路の写真はシステムの構成を参照してください。回路図は右に示します(急遽書いたので多少見にくいと思います・・)。マイコンにモータドライバを接続しただけの簡単な回路図となっています。

この回路はレーザプロジェクタ用なのでLDはパルス動作しません。しかし、マイコンに接続しているため、マイコンからオンオフの命令が出来ます。こうすることでレーザプロジェクタとして使用する場合は一筆書き以外の図形も表現できるようになります。

ちなみにモータドライバを自作することにも挑戦しましたが今まで電子回路の知識が全くないと言って良い程の知識不足であったため失敗に終わりました。しかし、苦労して製作したので写真を載せておきます。抵抗がイモムシのようで気持ち悪いので研究室内ではイモムシ回路と呼ばれています。動作としては矩形波を出力出来ますがノイズが大きいです。一応GNDの強化やアナログとデジタルでGNDをわけたりもしていますが半田付けも適当なので仕方ないかと思います。もし今後自作の必要があるならば後輩に希望を託したいです。

 

 

 

測定・走査結果

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kekka.jpg (11900 バイト)測定結果としては10mの距離計測が可能でした。しかし、後から気がついたのですがレーザ光がビームスプリッタに斜め45度で入射していなかった可能性があります。したがってビームスプリッタを正確に設置すれば更に長距離計測が可能となります。つまり本研究の目的である20mの測定も夢ではないはずです。

走査結果としては右図のような様々な図形を表現することが出来ました(グリーンレーザ使用)。一定の時間で図形を変化させればアニメーションのようにも見え、ちょっとしたレーザショーみたいなものも製作しました。動画にとりましたがサイズの問題上アップする事が出来ませんでした。また、走査中のレーザ光に線香の煙をあてると光がシートのようにみえます。この原理はレーザライトシートに限りなく似ています(通常は走査でなくレンズでレーザ光を広げるそうです)。

今後の課題としては走査結果からわかるように微妙な「ずれ」です。これは位置制御のフィードバックがかかっていないため、モータのオーバーシュートが原因であると考えられます。これは3次元測定にとって重要な問題であると予想されます。しかし、逆にフィードバックをかけなくてもこの位の図形であれば表現できるといえます。このシステムは最安値(赤色LD使用、ミニ四駆モータ使用)で8000円で製作出来るのでクリスマスのイルミネーションや広告などに応用出来るのではないでしょうか。また、距離計測に関してはシステム構成のところに記したようにディテクタ部分が未完成です。現在のところ既製品で計測を行いましたが、今後は実際に気球計測用にディテクタ部分を製作していけたらと考えています。

 

謝辞

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sagyou.jpg (11600 バイト)

 

 

written by Akiho Aiba

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